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おもかげ

そこかしこに散らばる

おもかげ


ここに座ってたよね

ここで寝てったっけ

ここで喧嘩しちゃってたな、とか

ここで死んだんだな、とか

思い出してばかり


君がもう居ないことは

僕が誰よりも知っている

なのに、君のおもかげを辿っては

ああ、もう居ないんだって

何度も繰り返してる


ほんの数日前まで、僕の目の前にいたのにな

生きてるって当たり前で、

だけど奇跡みたいなものだ

もう居ないことを思うと、

君がそこにいた時間が、とても愛おしく思われて

どうしようもないよ








野良猫の君は、嫌われものだった

喧嘩っ早いし、愛想がないしさ

初めて君を見た時は、若く凛々としていて

その姿から気の強さが知れた

だけど、ほんの数年で

君は傷だらけでクタクタの姿になってしまった

それでも、君は相変わらずの態度で

ちっとも仲良くしてくれようなんて気がなかった

どんなに話しかけてみても、とことん無視していたね


ここ一ヶ月の君ときたら、

頭が血まみれになっていて

それからひどいかさぶたに覆われて

そして、どんどん痩せていった

どうしたんだろう?

死んじゃうんじゃないか?

僕の心配をよそに、

君は酷い姿で、僕の家の周りをウロウロし始めた

女の子たちが塀の上に座った君を見て

恐い!とはしゃいだ

君は、知らんぷり


その日から2日前だった

夕方、君を見かけた僕は

いつもと同じく声を掛けた

「おいでよ」

知らんぷり、するはずの君が

そっと側に来た

驚いた

嬉しかった

何だよ、どんな気の変わりようだよ

ケガのせいで気が弱くなってるのか?

何だよ、でも嬉しいよ

側に来てくれるんだね

嬉しかった


その2日後の朝

君を見つけた時は、

もう体が半分固まっていたけど、

まだ呼吸はあって

でも、死ぬのは確かだと思った

鬱陶しいかな?と思いながら

一人ぼっちで生きてきた君が

誰かの愛情を受けながら死んだって良いじゃないか

そう自己満足に解釈して

じっと側にいた


よく生きたね

よく頑張ったよ

もう頑張らなくて良いよ

僕だけは君が大好きだからね

ゆっくり眠るんだよ


小雨の降る中だった

君は突然頭をもたげて、空を仰いだ

うめき声とも鳴き声ともつかない声で

小さく短く泣いて

左手を伸ばしてきた

僕はその手をつかんで、

ああ、死ぬのだと確信した

そして、それが本当に君の最期だった


君が大好きだよ

僕は、君のこと忘れたりしないからね

ハイイロちゃん

よく生きたね、よく頑張ったね

ありがとうね

最期、ここに来てくれて

ありがとうね

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